汗牛未充棟

読んだ本の感想などを中心に投稿します。Amazonリンクはアフィリエイトの設定がされています。ご承知おきください。

2019-01-01から1年間の記事一覧

シリーズ最終巻、有終の美を飾れるか⁉――西尾維新『美少年蜥蜴【影編】』

この時期、本来なら「2019年ベスト」みたいな企画をやりたいのですが、なにせ今年刊行された本をあまり読んでいない気がするので、今年は諦める方向で。来年はやれるよう新刊にもどんどん手を出していきたいです。 そんなわけで2019年ラストは西尾維新の美少…

10年代ラスト、すべてをぶっ壊す問題作――草野原々『大絶滅恐竜タイムウォーズ』

大絶滅恐竜タイムウォーズ (ハヤカワ文庫JA) 作者:草野原々 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/12/19 メディア: Kindle版 〈あらすじ〉 前作『大進化どうぶつデスゲーム』で辛くもネコ宇宙の侵食を退けた星智慧女学院3年A組の生徒たち。それから三ヵ…

新世代のSFを”Genesis”するアンソロジー――『GENESIS 一万年の午後 創元日本SFアンソロジー』

このアンソロジーに宮澤伊織も参加しているということで、たしか発売してすぐ買ったと思うのですが、つい積んでしまいました。気付けば1年も経ってしまい、第二弾が出るということで、ようやく読むことに。 頭から順番に読んでいって、さて宮澤伊織だと思っ…

季節は冬、関係性も裏世界の恐怖も加速する!――宮澤伊織『裏世界ピクニック4 裏世界夜行』

4巻の発売にあわせて特別PVが公開されたり、書店で大々的にフェアが組まれたりと、いま勢いのある『裏世界ピクニック』。この4巻では空魚と鳥子の関係に大きな進展がありました。ネタバレありで感想をつらつらと書きましたので、シリーズを未読という方…

目指せシリーズ化。スパチャしたくなる短編です!――宮澤伊織「ときときチャンネル#1【宇宙飲んでみた】」

e-honで新刊予約したら、そっちはまだ出荷されないのに、同じ本が店頭に並んでるぞ!どうなってんだトーハン! — とろマル (@0mini7wiz) December 19, 2019 というわけで、『裏世界ピクニック4』と『大絶滅恐竜タイムウォーズ』の発売日確保に失敗したクソ…

怪獣夫婦の披露宴&新婚旅行――茅田砂胡『女王と海賊の披露宴 ――海賊と女王の航宙記』

私が中学校の図書館で『デルフィニア戦記』に心を奪われてからはや十年。茅田砂胡の新刊が年三冊ペースで定期的に出ていたころは、発売日に新刊を買っていたのですが、最近は刊行時期もまちまちで発売に気づけないことも多く、本書を手に取るのも半月ほど遅…

続刊発売直前!生物種の進化を賭けた冒険ハード百合SF!――草野原々『大進化どうぶつデスゲーム』

今週12月19日に発売予定の草野原々『大絶滅恐竜タイムウォーズ』。その前作にあたる『大進化どうぶつデスゲーム』を発売時に買ったきり積んでしまっていたので、新刊の発売を機に読むことにしました。とはいえ、担当編集によると「前作読んでなくてもいい第2…

世界を舞台に正崎は、曲瀬は、何を為せるのか――野﨑まど『バビロンⅢー終ー』

タイトルに「終」って入っていたら普通完結すると思うじゃないですか!?そういうつもりで読んでいたのでラストに驚きました。 確かに、どこにも完結とは書かれてないな……。 バビロン 3 ―終― (講談社タイガ) 作者:野崎 まど 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2…

ひとり荒野をさまようシノン、キリトたちと合流なるか――川原礫『ソードアート・オンライン23 ユナイタル・リングⅡ』

様々なVRMMOゲームを舞台に主人公・キリトや仲間たちの活躍を描く人気シリーズSAO(ソードアート・オンライン)の最新作。今回の舞台となる≪ユナイタル・リング≫は、≪ザ・シード≫という共通の規格でつくられた数々のVRMMOゲームが融合して誕生し…

百合もあるよ!――宮澤伊織『迷宮キングダム 特殊部隊SASのおっさんの異世界ダンジョンサバイバルマニュアル!』

迷宮キングダム 特殊部隊SASのおっさんの異世界ダンジョンサバイバルマニュアル! (ドラゴンノベルス) 作者:宮澤 伊織 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2019/12/05 メディア: 単行本 ・「迷宮キングダム」とは 異世界転移(転生)は最近流行の一大ジャンルで…

自殺法 vs. 機密捜査班 罪を立証できるのか!――野﨑まど『バビロンⅡー死ー』

野﨑まど作品のヒロインというと、やはり一番強烈な印象を残しているのは最原最早ですが、彼女の活動はあくまで映画製作であり、社会的な影響はあまり大きくはありませんでした。 しかし『バビロン』の曲瀬愛は違います。彼女たちのような逸脱者が社会と対立…

選挙の不正と不審な自殺の謎を追え!絶望の政治サスペンス――野﨑まど『バビロンⅠ―女―』

2019年の秋クールでアニメも放送している野﨑まどの『バビロン』。アニメ放送前に原作を読んで、「へぇ、バビロンアニメ化したんだ。なかなか挑戦的だね」とかなんとか言おうとしたのですが、そんな町田さわ子的読書にも失敗し、今になってようやく読むこと…

――野﨑まど『2 新装版』

『[映]アムリタ』から『2』まで読んでください。 [映]アムリタ 新装版 (メディアワークス文庫) 作者: 野崎まど 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2019/09/25 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 舞面真面とお面の女 新装版 (メディアワークス文庫)…

野﨑まど的日常系――野﨑まど『パーフェクトフレンド 新装版』

メディアワークス文庫から刊行された野﨑まど作品の新装版シリーズ第5弾は『パーフェクトフレンド』。ジャンルでいうなら日常系だろうか。 よくある日常系のマンガなりアニメなりを頭に思い浮かべてほしい。複数人の主要キャラクターのなかには、主人公たち…

美少年シリーズ 祝アニメ化!――西尾維新『美少年蜥蜴 【光編】』

指輪学園中等部の美術室を根城にして、個性豊かな美少年たちが集う美少年探偵団。"良すぎる視力"を持ち、とある事件をきっかけに男装して入団することになった主人公・瞳島眉美と、団員たちの活躍を描く美少年シリーズの第9弾。ちなみに主人公の眉美は西尾維…

瞳島眉美が単身潜入調査に挑む――西尾維新『美少年M』

指輪学園中等部の美術室を根城にして、個性豊かな美少年たちが集う美少年探偵団。異常に発達した視力を持ち、とある事件をきっかけに男装して入団することになった主人公・瞳島眉美と、団員たちの活躍(?)を描く美少年シリーズの第9弾。ちなみに主人公の眉美…

”この世で一番面白い小説”ってどんな小説?――野﨑まど『小説家の作り方 新装版』

メディアワークス文庫から刊行された野﨑まど作品の新装版シリーズ第4弾は『小説家の作り方』。作品制作がテーマという点では『[映]アムリタ』を思い出させるが、天才が制作を主導していた前作とは違い、今回はド素人に作り方を教えるという物語になっている…

戴国の動乱遂に終結......か⁉――小野不由美『白銀の墟 玄の月(三),(四) 十二国記』

十二国記シリーズに先駆けて発表された『魔性の子』は現代を舞台にしたホラーでありながら、実質泰麒の物語であった。その後の十二国記シリーズ一作目『月の影 影の海』では既に戴国の政情不安が語られていた。そして二作目『風の海 迷宮の岸』では、少し時…

新装版第3弾は学園ミステリ!――野﨑まど『死なない生徒殺人事件~識別組子とさまよえる不死~ 新装版』

メディアワークス文庫から刊行された野﨑まど作品の新装版シリーズ第3弾は学園ミステリ『死なない生徒殺人事件~識別組子とさまよえる不死~ 新装版』。奥付を見ると初版となっていて、新装版は旧バージョンとは別の作品としてカウントされるんだなと、今更…

野﨑まど版伝奇ミステリ!遺言の先に待つものとは――野﨑まど『舞面真面とお面の女 新装版』

野﨑まどの第二長編となる『舞面真面とお面の女』。こちらの新装版が『[映]アムリタ』の新装版と同時発売となっている。 「伝記ミステリ」と謳われている本作だが、果たしてどこまで信じることができるのであろうか。 舞面真面とお面の女 新装版 (メディアワ…

物語と時代性、永遠に語り継がれる小説とは――伴名練「延命小説」

今年SF短編集『なめらかな世界と、その敵』(早川書房)が大ヒットした伴名練によるエッセイ「延命小説」が文學界2019年12月号に掲載されている。 (Amazonリンク) 内容はタイトルのとおり、時代を超え残り続ける物語についての思索で、2ページと短い…

いま一番”ヤバい”作家の原点が新装版で登場!――野﨑まど『[映]アムリタ 新装版』

野﨑まどといえば、私にとっては長らく「電撃文庫MAGAZINEに変な短編を連載している人」という印象だった。普段小説は読まない弟も、野﨑まど劇場だけは読みたがって、二人してゲラゲラ笑っていた。(ちなみに電撃文庫MAGAZINEは、SAOの特大ポスター目当てで…

SFの醍醐味が詰まった傑作アンソロジー――東京創元社編集部編『宙を数える 書き下ろし宇宙SFアンソロジー』

東京創元社の文庫創刊60周年を記念して制作された『宙を数える』及び『時を歩く』は、創元SF短編賞受賞者によるテーマ別の書き下ろしアンソロジーとなっている。今回読んだ『宙を数える』は宇宙SFがテーマとなっており、私は宮澤伊織を目当てに手に取っ…

『デススト』に触発された著者の新作短編が日本で初公開!――ピーター・トライアス(中原尚哉訳)「死亡猶予」

SFマガジン2019年12月号に掲載の短編。『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』『メカ・サムライ・エンパイア』などで知られる米国人作家ピーター・トライアスが、ゲーム『デス・ストランディング』に触発されて執筆したもので、このSFマガジンに掲…

十八年ぶり待望の新作。引き裂かれた主従の再会は叶うのか――小野不由美『白銀の墟 玄の月(一),(二) 十二国記』

『黄昏の岸 暁の天』の発売から18年。遂に発売された新作だが、まだ焦る必要はない。今作は全4巻構成となっており、三,四巻の発売日は11月9日となっている。長い間待ちわびたファンにご褒美をチラつかせておきながら、さらにあと一ヶ月も焦らすという鬼畜な…

仮想世界を管理する人工知能が”神”となったとき、そこに”人間”は必要なのか――森博嗣『神はいつ問われるのか?』

科学の発展により寿命を克服し不老不死を得た代わりに生殖能力を失った人類と、人間によって造られた人型"ウォーカロン"(いわゆる人造人間)、そして人工知能が共存する近未来世界を描いたWシリーズ。その続編となるWWシリーズ第2作が本書『神はいつ問われる…

特典小説が遂に書籍化。ストーリーを補完する必読の短編集!——川原礫『ソードアート・オンライン22 キス・アンド・フライ』

21巻「ユナイタル・リング Ⅰ 」の発売から約十ヶ月。待望の22巻はユナイタル・リングの続きではなく、短編集だった。書き下ろしではなく、アニメDVD&Blu-rayの特典として執筆された四編が再録されている。円盤まですべて集めるコアなファンには物足りないか…

雪の夜、再演される密室事件。”普通”と”特別”を巡る学園ミステリ——陸秋槎『雪が白いとき、かつそのときに限り』

雪が白いとき、かつそのときに限り (ハヤカワ・ミステリ) 作者: 陸秋槎,中村至宏,稲村文吾 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/10/03 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 日本在住の中国人作家、陸秋槎。『元年春之祭』に続く二作目の邦訳長編…

聖杯大戦の物語がついに一般流通に!――東出祐一郎『Fate/Apocrypha Vol.1 外典:聖杯大戦』角川文庫

2017年にテレビアニメ化もされた『Fate/Apocrypha』の原作小説。もともとFateシリーズを手掛けるTYPE-MOONが「TYPE-MOON BOOKS」という自社レーベルから出版していたために通常の流通には乗らず、アニメイトなどの専門店でしか買えなかった『Fate/Apocrypha…

バーサーカー・鬼女紅葉(Fate/Requiem)に会ってきました

先日紹介したFateシリーズのスピンオフ小説『Fate/Requiem 1 星巡る少年』 miniwiz07.hatenablog.com 『Fate/Requiem』に登場するサーヴァントの一騎、バーサーカー・鬼女紅葉は我が地元信州に伝わる英霊とのこと。調べてみると長野市は戸隠や鬼無里地区の伝…