物語と時代性、永遠に語り継がれる小説とは――伴名練「延命小説」
今年SF短編集『なめらかな世界と、その敵』(早川書房)が大ヒットした伴名練によるエッセイ「延命小説」が文學界2019年12月号に掲載されている。
(Amazonリンク)
内容はタイトルのとおり、時代を超え残り続ける物語についての思索で、2ページと短いエッセイだが、とても読み応えがあった。この「延命小説」はエッセイとして掲載されているが、『なめらかな世界と、その敵』で様々な文体を使い分けていた著者のことを思うと、この作品もエッセイという文体をとったひとつの短編小説と言えるかもしれない。ぜひ実際に読んで確かめてみてほしい。
ところで伴名練のエッセイが文學界に掲載されるということを、私はTwitterで知った。すぐにAmazonを確認したのだが、どうやら文學界にkindle版は存在しないようである。翌日仕事終わりに書店へ向かい、現物を手に取った。
そもそもエッセイであるし、そんなに長い文書ではないだろうと予想していたが、買う前に確認してみると、前述のとおり2ページと予想よりもさらに短いものだった。2ページのために私は千円を払うことができるのか。正直、このまま立ち読みで済ませてしまってもいいかなとも考えた。
しかしそこで頭をよぎったのは『なめらかな世界と、その敵』の”あとがき”である。
もしこの”あとがき”を読む前の私だったら立ち読みで済ませていたに違いない。しかし今の私はもう伴名練の熱量に心を打たれてしまっている。もちろん一読者に過ぎない私がひとつの雑誌を買わないで済ませたところで、何が変わるということもないだろう。それでもこの”あとがき”に触れてしまった以上、好きな作家の作品を立ち読みで終らせるということはできなかった。
そうして私は文學界をレジにもっていき、専用のカードを取り出すのだった。
書店の支払いを給与天引きにしてるから、お金を使ってしまったっていう罪悪感なく、書籍でも雑誌でも買い漁れて最高なんだよなあ!