2020-01-01から1年間の記事一覧
先日の短編小説年間ベストに続きまして、長編小説の個人的年間ベスト5を発表したいと思います。 短編小説と同様に、買ってはいるけれど読めていない本も多くあり、反省です。特にシオドラ・ゴスの『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』など…
いろんな人がTwitterやブログで年間ベストを発表しているのを見て、「これ、やりたい!」と思った昨年末。やるからには新刊を沢山読まなければということで、2020年初頭は順調に読んでいたのですが、その後読書ペースがガタ落ちに。結局気になってはいるけど…
本書『文学少女対数学少女』は、2014年から2019年までに中国の雑誌などで発表された短編3本に、書き下ろし1本を加えて、中国は新星出版社から2019年4月に出版された連作短編集です。著者の長編第2作『雪が白いとき、かつそのときに限り』が翻訳されたときか…
2020年も残り2週間ほどとなり、年間ベストが次々と発表される時期になりました。年明けには「SFが読みたい!」の2021年版も刊行され、今年のベストSF作品が発表されるでしょう。 しかし今回は一足も二足も早く、来年(2021年)の年間ベストに選ばれるに違いな…
人類最強の請負人・哀川潤が今回請け負った仕事は、天才心理学者・軸本みよりの調査活動への同行。哀川潤は依頼人である軸本みより、そしてパトロン兼お世話係として鴉の濡れ羽島から招聘したメイド長・班田玲とともに、ヴェネチアの地に降り立ちます。しか…
シノはきれいの中を猛スピードで駆け抜けるだけの生き方をしたかった。その先に何があるのかは知らない。(p.264) これは主人公・シノのモノローグです。倫理的に危うい配信活動を繰り返し、急速に配信者としてのステップを駆け上がっていくシノ。その刹那…
2020年10月に刊行されたカミツキレイニーの新作『魔女と猟犬』は、まずその派手な表紙に目が止まります。赤一色の背景にバストアップで描かれた女性は、長い銀髪に、白い✖印が走った真っ赤な瞳、さらには開いた口からマゼンタの舌がとびでていて、一度見たら…
西尾維新の最新作は、2019年7月刊行の『ヴェールドマン仮説』から約1年ぶりのノンシリーズ作品、『デリバリールーム』。 帯の煽り文句には「わたしは戦う!幸せで、安全な出産のために!!」「儘宮宮子、中学3年生。妊娠6ヶ月。」といったインパクトのある言…
人間の剣豪、鳥竜(ワイバーン)の冒険家、森人(エルフ)の術士など、様々な種族・職種の「修羅」たちが「本物の勇者」の座をめぐって激突する『異修羅』。3巻の「絶息無声禍」を読みました。 異修羅III 絶息無声禍 (電撃の新文芸) 作者:珪素 発売日: 2020/08/…
オキシタケヒコ『筺底のエルピス』、第2章「夏の終わり」第3章「廃棄未来」について、読後の余韻が残っているうちに、いくつか感想を書いておこうと思います。 ネタバレには特に配慮しませんので、ご注意ください。 [まとめ買い] 筺底のエルピス 作者:オキ…
絶対好きなタイプの作品なのに、なかなか読むきっかけがなくて後回しにしている。読書好きならば、そんなシリーズ作品が一つや二つ思い当たるという方も多いのではないでしょうか。私の場合、小川一水『天冥の標』や、瘤久保慎司『錆喰いビスコ』がそれにあ…
マルドゥックシティという巨大都市を舞台に、能力者たちの闘争を描く『マルドゥック・アノニマス』。5巻ではバロットが、かつての自分を思わせる少女アビゲイルと向き合います。 マルドゥック・アノニマス 5 (ハヤカワ文庫JA) 作者:冲方 丁 発売日: 2020/05…
コロナ禍の影響で当初の予定より一ヶ月遅れの2020年5月末に発売された「SFマガジン」の2020年6月号は、英語圏SF受賞作特集。ネビュラ賞などの著名な賞を受賞した短編が、合わせて4編掲載されています。 SFマガジン 2020年 06 月号 発売日: 2020/05/25 メディ…
舞台となるのは、吸血鬼などの怪物が実際に息づく19世紀末の欧州。”怪物専門”の異形の探偵・輪堂鴉夜(りんどう あや)と、その弟子・真打津軽(しんうち つがる)が怪事件に挑む、ミステリ×怪異バトルの傑作です。 アンデッドガール・マーダーファルス 1 (講談…
西尾維新のデビュー作である『クビキリサイクル』から始まる《戯言》シリーズ。その《戯言》シリーズのスピンオフ作品にして、”人類最強の請負人”こと哀川潤が主人公の《最強》シリーズも本作で4巻目となりました。帯には「シリーズ完結」と謳われています…
VRMMOSVG「ユナイタル・リング」で本格的に町づくりを始めたキリトたちですが、そこに新たな敵、そして最大の脅威が襲いかかります。 しかしやはり、一番気になるのは表紙の男性でしょう。ユナイタル・リング攻略と並行してアンダーワールドのエピソードも進…
『新本格魔法少女りすか』は、『化物語』『掟上今日子の備忘録』で知られる西尾維新の初期作品にして、未完のシリーズ作品です。 新本格魔法少女りすか (講談社文庫) 作者:西尾 維新 発売日: 2020/04/15 メディア: 文庫 2003年から雑誌「ファウスト」で連載…
野﨑まどの新作のテーマは「仕事とは何か」。ありふれた問いのようでありながら、その実答えようと思うと言葉に詰まってしまうテーマですが、本作では心理学者の主人公と人工知能とのカウンセリングを通して、その問いの答えを導きます。 タイタン 作者:野崎…
2019年の5月に早川書房のnoteにアップされたところ、20万を超えるPVを獲得し同noteの歴代アクセス数1位となった「ピュア」。 愛する人ともっと話したい、だけどそれよりも、交わった果てに食べてしまいたい。そんな究極の葛藤を描いた表題作のほか、「性」と…
TYPE-MOONがおくるアプリゲーム『Fate/Grand Order』の公式ミステリ小説アンソロジー。file.01と2ヶ月連続刊行となっています。file.01では60ページほどの短編が5本収録されていましたが、このfile.02では中編が3本収録されており、本数こそ減っているものの…
<不可視理論>という正体不明のウイルスによって交通網やネットが攻撃され、世界がバラバラに分断された世界で、恋人に会うために旅を始める数学SFです。 不可視都市 (星海社FICTIONS) 作者:高島 雄哉 発売日: 2020/03/15 メディア: 単行本(ソフトカバー)…
2016年に『横浜駅SF』でデビューした注目のSF作家、柞刈湯葉。カクヨムではいくつも短編を発表しているようですが、書籍としては初の短編集が『人間たちの話』となります。 人間たちの話 (ハヤカワ文庫JA) 作者:柞刈 湯葉 発売日: 2020/03/18 メディア: 文庫…
人間の剣豪、鳥竜(ワイバーン)の冒険者、森人(エルフ)の術士など、様々な種族・職種の"修羅"たちが「本物の勇者」の座を巡って激突する『異修羅』。 謀略を駆使する修羅も登場し、策謀入り乱れる第2巻が、今回もカクヨム版から10万字も加筆されて発売されま…
ハヤカワ文庫発の百合SFアンソロジー『アステリズムに花束を』にてトリを飾った、小川一水の「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」。辺境宇宙で女同士のでこぼこコンビが、因習や偏見と戦いながら魚っぽいものを捕まえるという、漁業百合SFが長編版と…
第26回電撃小説大賞では、アニラジをテーマにした『声優ラジオのウラオモテ』が大賞を受賞しましたが、同じく銀賞を受賞した『こわれたせかいの むこうがわ ~少女たちのディストピア生存術~』においても、重要なキーアイテムとしてラジオが登場します。 唯…
長野県は小布施町を観光でふらついていたときに、「じゃらん亭*1」という古本屋兼喫茶店で見つけた一冊。2004年の出版で、その当時の様々なジャンルの文学賞について、両氏がざっくばらんに対談をした様子が収録されています。 文学賞メッタ斬り! (ちくま文…
作家としては『なめらかな世界と、その敵』でベストSF2019国内編1位を獲得し、アンソロジストとしては先日『2010年代SF傑作選』全2巻が発売されたばかりの伴名練の最新作「白萩家食卓眺望」が、SFマガジン2020年4月号に掲載されています。 SFマガジン2020年0…
TYPE-MOONがおくるアプリゲーム『Fate/Grand Order』の公式小説アンソロジー。タイトルにあるとおり、ミステリー作品の短編を集めたものとなっています。筆を執るのは、Fateシリーズの原作者である奈須きのこの指名を受けて、FGOの期間限定イベント「虚月館…
科学の発展によって不老不死を得た代わりに生殖能力を失った人類と、人間によって造られた”ウォーカロン"(いわゆるアンドロイド)、そして人工知能が共存する近未来世界を描いたWシリーズ。その続編となるWWシリーズ第三作が本書『キャサリンはどのように子供…
大森望と伴名練が選者となって編まれた、2010年代に発表されたSF短編小説の傑作選。 真っ赤な表紙が目を引く第2巻は、10年代にデビューした作家の短編が集められています。 中性的なキャラクターを用いた表紙の素晴らしさは、『傑作選1』の感想で述べた通り…