『異修羅 Ⅱ 殺界微塵嵐』珪素――すべてを粉微塵にする嵐を前に、恐るべき修羅たちが激突する。謀略の2巻!
人間の剣豪、鳥竜(ワイバーン)の冒険者、森人(エルフ)の術士など、様々な種族・職種の"修羅"たちが「本物の勇者」の座を巡って激突する『異修羅』。
謀略を駆使する修羅も登場し、策謀入り乱れる第2巻が、今回もカクヨム版から10万字も加筆されて発売されました!
<あらすじ>
その世界にはかつて”本物の魔王”が君臨していた。やがて魔王は”勇者”によって倒されるが、勇者の正体は誰も知らない。
そこで人族最後の国家「黄都」は勇者を”決める”ための上覧試合を行うことを決める。各地から集まったのは、いずれも劣らぬ超常の英雄、能力者ばかり。果たして試合を勝ち上がって”勇者”になるのは、いったい誰なのか。
黄都から離反し、魔王自称者となって新公国リチアを建国した”警めのタレン”が討伐されてからしばらく、各地ではまだ反黄都勢力が燻っていた。そんななか、ヤマガ大漠に発生する”微塵嵐”が黄都に向かっているという知らせが各地を巡る。微塵嵐とはとてつもない量の砂を伴う嵐であり、微塵嵐に巻き込まれたものは一瞬にして吹き荒れる砂に削られ、粉微塵になってしまう。これに乗じて黄都への反逆を企む抵抗勢力たち。その裏には謀略をもって状況を操る修羅たちの存在が蠢いていた。
そして微塵嵐のもとに集う恐るべき修羅たち。数々の魔剣を自在に操る魔剣士、復活する度に弱点を克服するゴーレム、遥か地平線から地形を変えるほどの一撃を放つ巨人の弓使い......。一瞬の油断が死に繋がる殺界のなか、果たして生き残るのは誰か。
......そして、六合上覧の参加者が揃うまで、あと 人。
○圧倒的に面白いプロローグ
『異修羅』という物語の本筋は勇者を決めるためのトーナメント戦、六合上覧にあるかと思いますが、あらすじを読んでもわかる通り、まだ六合上覧は始まっていません。六合上覧に参加する戦士(=修羅)たちが、続々と黄都へと集まってきている段階です。
刃牙で言うならば、最凶死刑囚編の冒頭で死刑囚たちがそれぞれの方法で脱獄している場面です。*1脱獄の過程でそれぞれのパーソナリティやその強さが示され、彼らがどのような戦いを見せてくれるのか、視聴者(読者)は期待を高まらせました。『異修羅』はその最高にワクワクするプロローグが、約400ページの単行本2冊に渡って書かれているのです。
しかしそんなプロローグも2巻で終わり、3巻ではとうとう六合上覧が始まるとのこと。存分にその強さが示された修羅たちがどう戦うのか、3巻が楽しみです。
〇魅力的なキャラクターたち
突然ですが人気の出るキャラクターとはどのようなキャラクターでしょうか。もちろん様々な要素がありますが、その外見、すなわちキャラクターデザインが重要であることは論を俟たないでしょう。人間は誰しも美男美女が好きであり、それ故に世に数あるソーシャルゲームでは、日々美形がピックアップされています。この『異修羅』2巻でいうならば、”絶対なるロスクレイ”や”黒曜、リナリス”のような美麗な容姿をもったキャラクターがSSRとなるのでしょう。
だからこそ、異修羅がそういう作品ではないと分かっていながら、メレや、トロア、メステルエクシルは引き立て役なのでは、という侮りが2巻を読む前の自分にはあったと思います。しかししかし、あにはからんや、読み終わる頃にはメレもトロアもメステルエクシルも、等しく好きになっているのでした。
以下、ネタバレです。
この2巻では「チャリジスヤの爆砕の魔剣」がひとつのキーアイテムでした。(これもマクガフィンと呼ぶのでしょうか。)黄都に対抗する旧王国主義者の首魁、”破城のギルネス”が所有していたものを”窮地の箱のメステルエクシル”が奪い、それを追って”おぞましきトロア”が接触・交戦し、とある人物たちの計らいで最後にはギルネスの元に戻ります。
微塵嵐が迫る中、爆砕の魔剣を巡って激しい戦いを繰り広げたトロアとメステルエクシルでしたが、彼らの守るべきもの、貫くべき誇りは、魔剣とは別のところにありました。見知らぬ他人のために奪って魔剣をためらいなく差し出すトロア、そしてトロアに勝ってないから魔剣を置いていくというメステルエクシル。トーナメント方式で殺し合いをするという物語の展開上、推しキャラを作れば作るほど後で辛くなるのは自明なのですが、こんなものを見せられたら、彼らのことを好きになるほかありません。ちなみにトロアやメステルエクシルと違って、最後まで爆砕の魔剣にすがったギルネスの末路が対照的で印象に残りました。
また、”地平咆、メレ”についても、一方的な存在だった微塵嵐を圧倒することで、その強さを見せつけました。つくづく「強さ」を読者に魅せる演出が上手い作品だなと感じます。
まだまだ未登場の修羅はどのようにして最強なのか、3巻も楽しみです。
*1:アニメを中途半端に見た程度の知識で書いているので何か違っていたらすみません。