汗牛未充棟

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ファンタジー

陸秋槎『ガーンズバック変換』――中世ファンタジーから現代お仕事もの、近未来SF、さらには架空伝記から異常論文まで幅広く収録された著者初のSF短編集!

デビュー作の『元年春之祭』(2018,早川書房)をはじめ、『雪が白いとき、かつそのときに限り』(2019,同)、『文学少女対数学少女』(2020,同)など、華文ミステリの名手として知られる陸秋槎。そんな陸は、『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー』(2019,同)…

ロケット商会『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録 Ⅱ』――遂に集結した懲罰勇者たち、街を飲み込む謀略に挑む!

勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録II (電撃の新文芸) 作者:ロケット商会 KADOKAWA Amazon 前:ロケット商会『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』――勇者=大罪人、どこか憎めないクズたちの奮戦が熱い! - 汗牛未充棟 とある大罪を犯して”懲罰勇者”とな…

ロケット商会『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』――勇者=大罪人、どこか憎めないクズたちの奮戦が熱い!

勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録 (電撃の新文芸) 作者:ロケット商会 KADOKAWA Amazon 『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』は、とある大罪を犯して”懲罰勇者”となった主人公のザイロが、剣の《女神》テオリッタや仲間の懲罰勇者たちとともに、”魔王…

早見慎司『死なないセレンの昼と夜 ー世界の終わり、旅する吸血鬼ー』――枯れ果てた世界でも、一杯のコーヒーはいかが?

死なないセレンの昼と夜 ‐世界の終わり、旅する吸血鬼‐ (電撃文庫) 作者:早見 慎司 KADOKAWA Amazon 雨が降らなくなって数百年、とうに現代文明は崩壊し、見渡すばかりの荒野が広がる世界。そんな世界をサイドカー付きの三輪バイクで旅しながら、気まぐれに…

茅田砂胡『天使たちの課外活動』7,8—―【コラム】終わらないエピローグという読者の理想、あるいは茅田砂胡ワールド超入門

どんな物語であれ、終わりはつきものです。小説に限らず、漫画やゲームが描く物語の虜となり、エンディングを迎えたあとも、愛したキャラクターたちの物語をもっと見たいと願った経験は、誰しもあるのではないでしょうか。 そうはいっても終わってしまった以…

カミツキレイニー『魔女と猟犬』――表紙のインパクトだけじゃない!練りこまれた構成と演出による王道ファンタジー衝撃の開幕!

2020年10月に刊行されたカミツキレイニーの新作『魔女と猟犬』は、まずその派手な表紙に目が止まります。赤一色の背景にバストアップで描かれた女性は、長い銀髪に、白い✖印が走った真っ赤な瞳、さらには開いた口からマゼンタの舌がとびでていて、一度見たら…

『異修羅 Ⅱ 殺界微塵嵐』珪素――すべてを粉微塵にする嵐を前に、恐るべき修羅たちが激突する。謀略の2巻!

人間の剣豪、鳥竜(ワイバーン)の冒険者、森人(エルフ)の術士など、様々な種族・職種の"修羅"たちが「本物の勇者」の座を巡って激突する『異修羅』。 謀略を駆使する修羅も登場し、策謀入り乱れる第2巻が、今回もカクヨム版から10万字も加筆されて発売されま…

怪獣夫婦の披露宴&新婚旅行――茅田砂胡『女王と海賊の披露宴 ――海賊と女王の航宙記』

私が中学校の図書館で『デルフィニア戦記』に心を奪われてからはや十年。茅田砂胡の新刊が年三冊ペースで定期的に出ていたころは、発売日に新刊を買っていたのですが、最近は刊行時期もまちまちで発売に気づけないことも多く、本書を手に取るのも半月ほど遅…

百合もあるよ!――宮澤伊織『迷宮キングダム 特殊部隊SASのおっさんの異世界ダンジョンサバイバルマニュアル!』

迷宮キングダム 特殊部隊SASのおっさんの異世界ダンジョンサバイバルマニュアル! (ドラゴンノベルス) 作者:宮澤 伊織 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2019/12/05 メディア: 単行本 ・「迷宮キングダム」とは 異世界転移(転生)は最近流行の一大ジャンルで…

戴国の動乱遂に終結......か⁉――小野不由美『白銀の墟 玄の月(三),(四) 十二国記』

十二国記シリーズに先駆けて発表された『魔性の子』は現代を舞台にしたホラーでありながら、実質泰麒の物語であった。その後の十二国記シリーズ一作目『月の影 影の海』では既に戴国の政情不安が語られていた。そして二作目『風の海 迷宮の岸』では、少し時…

十八年ぶり待望の新作。引き裂かれた主従の再会は叶うのか――小野不由美『白銀の墟 玄の月(一),(二) 十二国記』

『黄昏の岸 暁の天』の発売から18年。遂に発売された新作だが、まだ焦る必要はない。今作は全4巻構成となっており、三,四巻の発売日は11月9日となっている。長い間待ちわびたファンにご褒美をチラつかせておきながら、さらにあと一ヶ月も焦らすという鬼畜な…

十二国記シリーズ 再読感想まとめ【part 2】

miniwiz07.hatenablog.com ⑤『丕緒の鳥』 丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫) 作者: 小野不由美,山田章博 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2013/06/26 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (82件) を見る 十二国記シリーズの短編集。「yom yom…

超常たちの激突、その前日譚――珪素『異修羅Ⅰ 新魔王戦争』

その世界にはかつて”本物の魔王”が君臨していた。人族だけでなく獣族や竜族までをも恐怖で支配した魔王であったが、ある時ついに「勇者」によって倒される。 しかし魔王を討ち果たした勇者とはいったい誰なのか、それを知るものはいなかった。そこで人族最後…

十二国記シリーズ 再読感想まとめ【part 1】

この秋に十八年ぶりの新刊の発売を控えた十二国記シリーズ。それに備えて、過去作を振り返ってみた。 中学生の頃、たびたび叔父に読み終わった本を送ってもらっていた。一回に送られてくる量は段ボール二つほどだったと思うが、そのなかに小野不由美の十二国…