汗牛未充棟

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異能バトル

牧野修『MOUSE マウス』――大人は立ち入り禁止、子供のためのネバーランド。ドラッグジャンキーなマウスたちの生存と闘争。

MOUSE マウス (ハヤカワ文庫JA) 作者:牧野 修 早川書房 Amazon ラバーやビニールの衣服に身を包み、常時ドラッグ漬けの子供たち。主観と客観の入り混じった子供だけの世界で、彼ら彼女らはどのように生きているのか。 2022年4月16,17日に代官山蔦屋書店で開…

人間六度『スター・シェイカー』――少女を守る戦いはやがて宇宙存亡の危機へ、アイディア満載のインフレ・テレポート・SF!

テレポートを使って一瞬で移動出来たら。そんな誰もが一度は考えたことがあるだろう妄想を、極限まで考え詰めたのがこの『スター・シェイカー』だ。ボーイ・ミーツ・ガールから始まった物語は、跳躍を繰り返し、やがてこの宇宙の秘密にまでたどり着く。 スタ…

桃野雑派『老虎残夢』――ミステリのお約束を次々と破壊、異色の武侠ミステリ!

老虎残夢 作者:桃野雑派 講談社 Amazon 「広い意味の推理小説」を募集する江戸川乱歩賞。今年度第67回は、伏尾美紀『北緯43度のコールドケース』(「センパーファイ―常に忠誠を―」改題)と、今回紹介する桃野雑派『老虎残夢』の二作が同時受賞した。公式の惹句…

オキシタケヒコ『筺底のエルピス7-継続の繋ぎ手-』――【コラム】繰り返される《門部》攻略戦。《門部》という筺の底に希望は眠るのか。

(※記事中に7巻までのネタバレを含みます。) 憑依した人間に抗えない殺人衝動をもたらす「殺戮因果連鎖憑依体」。そのような超常の存在に対し、「停時フィールド」という能力で戦う人々を描いたSF異能バトル小説『筺底のエルピス』の待望の7巻が発売されま…

西尾維新『新本格魔法少女りすか』――シリーズ後半感想。12年なんて空白が酷く些細な問題なのが、この物語なの。

西尾維新は最終回というものに一家言ある作家だと、私は認識しています。過去の作品はほとんど実家に置いてきてしまったので確認できないのですが、どこかのあとがきで最終回というものに対する言及もあったような気がします。なにより、〈物語〉シリーズで…

オキシタケヒコ『筺底のエルピス』2~4巻感想

オキシタケヒコ『筺底のエルピス』、第2章「夏の終わり」第3章「廃棄未来」について、読後の余韻が残っているうちに、いくつか感想を書いておこうと思います。 ネタバレには特に配慮しませんので、ご注意ください。 [まとめ買い] 筺底のエルピス 作者:オキ…

『アンデッドガール・マーダーファルス 1』青崎有吾――怪物たちに異形の探偵が"知"と"暴"で挑む

舞台となるのは、吸血鬼などの怪物が実際に息づく19世紀末の欧州。”怪物専門”の異形の探偵・輪堂鴉夜(りんどう あや)と、その弟子・真打津軽(しんうち つがる)が怪事件に挑む、ミステリ×怪異バトルの傑作です。 アンデッドガール・マーダーファルス 1 (講談…

『新本格魔法少女りすか』西尾維新――未完の初期作品がついにリブート!!

『新本格魔法少女りすか』は、『化物語』『掟上今日子の備忘録』で知られる西尾維新の初期作品にして、未完のシリーズ作品です。 新本格魔法少女りすか (講談社文庫) 作者:西尾 維新 発売日: 2020/04/15 メディア: 文庫 2003年から雑誌「ファウスト」で連載…

『異修羅 Ⅱ 殺界微塵嵐』珪素――すべてを粉微塵にする嵐を前に、恐るべき修羅たちが激突する。謀略の2巻!

人間の剣豪、鳥竜(ワイバーン)の冒険者、森人(エルフ)の術士など、様々な種族・職種の"修羅"たちが「本物の勇者」の座を巡って激突する『異修羅』。 謀略を駆使する修羅も登場し、策謀入り乱れる第2巻が、今回もカクヨム版から10万字も加筆されて発売されま…

呪術廻戦ノベライズ第2弾!伊地知回もあります!――北國ばらっど『呪術廻戦 夜明けのいばら道』

現在週刊少年ジャンプで連載中の芥見下々『呪術廻戦』、そのノベライズ第2弾となります。 今回も作中にキャラクターや世界観の説明がなく、完全に原作読者向けとなっています。また、作中に本編最新刊のネタバレがあるため、同時発売の8・9巻を読了後にこの…

七海、伊地知、真人好きにオススメです――北國ばらっど『呪術廻戦 逝く夏と還る秋』

皆さまお正月はいかがお過ごしでしょうか。 私は実家で毎日12時間くらい寝ています。お陰でこのブログの更新も不安定になる始末。まあ、概ね理想のお正月と言ってよいでしょう。 さて、今回取り上げるのは、現在週刊少年ジャンプで連載中の芥見下々『呪術廻…

創元SF短編賞受賞のアクションSF――宮澤伊織「神々の歩法」「草原のサンタ・ムエルテ」

新年、あけましておめでとうございます。 このブログが週3回の更新となって2か月ですが、来年もこのペースで続けていけるよう頑張ります。 さて、新年一発目は宮澤伊織の短編を紹介したいと思います。 「神々の歩法」は第六回創元SF短編賞の受賞作品で、『年…

超常たちの激突、その前日譚――珪素『異修羅Ⅰ 新魔王戦争』

その世界にはかつて”本物の魔王”が君臨していた。人族だけでなく獣族や竜族までをも恐怖で支配した魔王であったが、ある時ついに「勇者」によって倒される。 しかし魔王を討ち果たした勇者とはいったい誰なのか、それを知るものはいなかった。そこで人族最後…