『新本格魔法少女りすか』西尾維新――未完の初期作品がついにリブート!!
『新本格魔法少女りすか』は、『化物語』『掟上今日子の備忘録』で知られる西尾維新の初期作品にして、未完のシリーズ作品です。
2003年から雑誌「ファウスト」で連載が始まった本作は、2007年に講談社ノベルスから単行本3巻が出版され、翌2008年にその続きとなる第10話が「ファウスト」誌上で発表されました。以降、雑誌の廃刊などもあり、シリーズとしては停止してしまいます。
私が『りすか』を手に取ったのは中学校の図書館だったので、恐らく2009年頃。その頃は西尾維新関連の新作や新展開がある度に「りすかの続きは?」とか「世界シリーズどうなってるの?」とか言われていまた気がしますが、最近はそんな声すらも聞かなくなったように思います。
しかし、この度同じく講談社の文芸誌「メフィスト」の2020年VOL.1から連載が再開され、合わせて1巻が文庫化しました。今後、8月に2巻、12月に3巻の刊行が予定されています。
〇あらすじ
本作の主人公は、佐賀県に住む少年・供犠創貴(くぎ きずたか)と、”魔法の王国”長崎からやってきた魔法少女・水倉りすかのコンビ。「使える手駒」を集めている創貴と、強大な魔法使いである父親を捜すりすかは、互いの目的のため、協力して様々な魔法使いたちと対峙していきます。
魔法使いといっても、彼らは様々な魔法を使い分けるわけではなく、基本的には一人につき一つの能力しか持たないので、ジャンルとしては三部以降の『ジョジョの奇妙な冒険』のような能力バトルに近い趣があります。
また、本作の「魔法少女」という概念については、「プリキュア」や「まどマギ」のような変身ヒロインではなく、それ以前の「魔女っ子もの」の流れを汲んでいるとのこと。豆猫さん*1の以下のブログで分かりやすく解説されているので、是非こちらをご覧ください。
〇以下、思い出
私が『りすか』を初めて読んだのは、前述のとおり中学生のときでした。物語の内容については、もうほとんど忘れていたのですが、影縫いを使う魔法使いの屋敷に潜入するエピソードが、とても嫌な読後感だったことは覚えていました。
該当のエピソードはこの1巻に収録されていて、「第二話 影あるところに光あれ。」がそれです。読み始めてすぐ「嫌な印象のエピソードだ!」と思い当たったのですが、具体的にどこで嫌な印象を持ったのかが、なかなか思い出せません。無事、敵の魔法使いも撃退され、記憶違いかなと思っていたところで、終盤も終盤、”それ”が起きました。創貴、お前……。
当時よっぽどトラウマになったのか、その場面にいたるまで、その展開をまったく思い出せませんでした。どうやら記憶の封印に成功していたようです。
さて、ここで気になるのは、当時中学生だった私は創貴という主人公をどう思っていたのかなということです。自分は大人も含めた周囲の人間より圧倒的に有能であると信じて疑わず、将来の”手駒”を厳選しているという、まあ、いけ好かない主人公です。
いまになって読むと、本人の自信の割には、見落としや読み違いがあって、そこが愛嬌かなとも思うのですが、当時の私はもしかしたら自信たっぷりな創貴に憧れていたかもしれません。
まあ、普通に嫌いだったかもしれませんが、りすかたちを狙う刺客の称号と名前が次々に明かされるという、強烈に中二心をくすぐる三話の引きを読ませられては、どちらにせよ2巻を手に取るほかなかったでしょう。