美少年シリーズ 祝アニメ化!――西尾維新『美少年蜥蜴 【光編】』
指輪学園中等部の美術室を根城にして、個性豊かな美少年たちが集う美少年探偵団。"良すぎる視力"を持ち、とある事件をきっかけに男装して入団することになった主人公・瞳島眉美と、団員たちの活躍を描く美少年シリーズの第9弾。ちなみに主人公の眉美は西尾維新作品のメインキャラクターのうちでも屈指のクズとされている。
タイトルは毎回江戸川乱歩作品のオマージュとなっており、今回の元ネタは『黒蜥蜴』。
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〈あらすじ〉
私立アーチェリー女学園への潜入調査を終えて、指輪学園へと帰還した瞳島眉美。しかしいつもの美術室に美少年探偵団の姿はなく、それどころか指輪学園から彼らの痕跡が消えていた。眉美は手掛かりを求めて、元団長にして現団長の兄である双頭院踊のもとを再び訪れる。踊の導きで眉美が得たメンバーからのメッセージとは。そしてメンバーを探す眉美の前にまたも”彼”が姿を現す。
”この事件は私が失明して終わる”
私が一番西尾維新作品に熱中していたのは中学生から高校生の頃だった。今の西尾作品を読んでもあの頃のように感動することはなくなってしまったが、好きな作家であることには変わりなく、しつこく追いかけているとたまにドキッとさせられることがある。
美少年探偵団のシリーズ中においては、双頭院踊の存在がそれだった。(ちなみに西尾作品全体で一番衝撃を受けたのは『終物語(中)』で忍が神原に負けたところ。)
美少年探偵団での活動を、若気の至りというか黒歴史のように語る踊に眉美はショックを受けていたが、読者にとっても冷や水を浴びせられるような言葉だったのではないか。そんな元団長の再登場である。
今度の彼は、美少年探偵団のメンバーは確かにすごいやつらだが、同じくらいすごいやつらはどこにでもいると眉美に語りかける。(こいつが真の敵か?) キャラクターものの小説で扱うにはなかなか挑戦的なテーマではないか。
そして、どこにでもいるすごいやつらを今度は眉美が見つけ出そうとする。シリーズの始まりで眉美が団長に見つけ出されたことを思うと、とてもきれいな対比になっている。
ところで作中のクロスオーバー要素でどうしても気になる点が……(以下、ネタバレ)
「トゥエンティーズ」のリーダー・麗さんとの会話で堂々と別作品にタイトルが登場している。『零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係』。大厄島の上空まで人類最強たちを運び、その後人類最強が紐なしバンジーを決行したあの軍事ヘリがトゥエンティーズによるものだったという。(あれ?あのヘリ運転してたの石丸小唄じゃなかったっけ?と思って軽く読み直してみたけど、そんなことなかった。)まさかこんなところでそんなクロスオーバーをしてくるとは……。
しかし戯言シリーズの世界観で考えると、探偵団メンバーくらいのすごいやつはどこにでもいるというのも、それはそうだろうなという嫌な納得をしてしまうのだった。