汗牛未充棟

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七海、伊地知、真人好きにオススメです――北國ばらっど『呪術廻戦 逝く夏と還る秋』

 皆さまお正月はいかがお過ごしでしょうか。
 私は実家で毎日12時間くらい寝ています。お陰でこのブログの更新も不安定になる始末。まあ、概ね理想のお正月と言ってよいでしょう。

 さて、今回取り上げるのは、現在週刊少年ジャンプで連載中の芥見下々『呪術廻戦』のノベライズです。ノベライズといっても原作ストーリーや劇場版などのノベライズ作品ではなく、完全オリジナルストーリーとなっています。

 

呪術廻戦 逝く夏と還る秋 (JUMP j BOOKS)

呪術廻戦 逝く夏と還る秋 (JUMP j BOOKS)

 

 

 「休日廻詮」「反魂人形」「闇中寓話」「働く伊地知さん」「守鬼幻視行」の五編からなる短編集です。

 

 このような外伝作品を紹介する際に、「(原作を読まずに)ここから入っても大丈夫」というのは定番の文句だと思います。実際私も、少しでもいけそうだなと思えば、「ここからでも大丈夫」と気軽に言っています。しかし今回に限っては、そうもいかなさそうです。

 私もこのようなノベライズ作品を読むのが久しぶりだったので驚いたのですが、呪術や呪霊とはどのような存在であるのか、そして虎杖や伏黒、釘崎などの登場人物がどのようなキャラクターであるのかといったことが、小説内では全く説明されていません。どうやら原作既読者に読者層を絞っているようです。

 

 というわけで、『呪術廻戦』既読者、とりわけ七海や伊地知などのサブキャラクターが好きな人にオススメの一冊です。

 

 それというのも、これもノベライズゆえの仕方ないことではあるのですが、虎杖・伏黒・釘崎などのメインキャラクターについては、その成長の物語を原作以外でやるわけにはいかないので、自然とストーリーも当たり障りのない感じになってしまいます。一つ目の「休日廻詮」がちょうど彼らの休日の物語でしたが、なんというかRPGの特に報酬とかのないサブイベントみたいな印象でした。

 

 その点サブキャラクターをメインに据えたストーリーは自由度が高く面白かったです。特に一級呪術師・七海建人が主人公の「反魂人形」はオリジナルの敵呪詛師も登場し、読み応えがありました。

 物語は、一般人相手に「死者の蘇生」を謳って商売をする呪詛師の調査のため、七海が札幌を訪れるというものです。前述のように戦闘シーンもあって良かったのですが、ただ同行者が五条だったためどうしてもぬるゲー感が……。次があれば七海と猪野のコンビを見てみたいところです。

 戦闘こそないものの、真人が主人公の「闇中寓話」や伊地知さんにフォーカスを当てた「働く伊地知さん」もキャラクターの掘り下げがあってオススメです。

 

 また、人の集まる所に呪霊も発生するため、作品において”街”というのも重要なファクターであると思うのですが、「休日廻詮」で虎杖たちが訪れた秋葉原や、七海が呪詛師の調査で訪れた札幌の地下街など、街の描写が丁寧で、『呪術廻戦』という作品の雰囲気にとても合っていたと思います。