汗牛未充棟

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殺し屋女子高生 VS. 復讐の鉄槌――藤原恒介『デストロ246 ハンマーレイジ』

 

デストロ246 ハンマーレイジ (サンデーGXコミックススペシャル)
 

 

◼イントロ


 本書は高橋慶多郎による漫画『デストロ246』のノベライズである。漫画と同じ版型であり、表紙イラストも本家と同じように、様々な小道具が散乱した背景にヒロインが大きく描かれていて、本書を漫画の隣に並べても全く遜色ないという嬉しい作りになっている。

 漫画のノベライズの魅力として、スピンオフの物語を楽しむことができるというのはもちろんあるが、小説ならではの利点もあるだろう。例えば映画や漫画では表しきれないような心理描写や、設定や世界観を文章で長々と説明しても違和感がないといったことだろうか。本作では何を魅せてくれるのだろうか。

 

 

◼『デストロ246


 アニメ化もされた『ヨルムンガンド』でお馴染みの高橋慶太郎による女子高生たちの群像劇が『デストロ246』である。もちろん彼女らはただの女子高生ではない。巨大企業「トーノフーズグループ」を経営する透野隆一が、自らの復讐のために南米から買い付けたプロの殺し屋「透野藍」と「透野翠」。横浜一帯を支配する893の跡取りである「万両苺」とその護衛「佐久良南天」、「市井蓮華」。そして都内の学園に通いながらも、一帯のバランスえお取ろうと暗躍する「的場伊万里」。彼女たち6人の女子高生を中心に、とある財閥が囲う最高クラスの殺し屋「沙紀」やCIA所属の「紅雪」など、様々な人物が東京・横浜を舞台に殺し合いを繰り広げる。

 ちなみに作中の生存率は男女で著しい差があるのもデストロの特徴である。どちらの方がよく死ぬかは無論言うまでもないだろう。

 そして『デストロ246』をノベライズするのは、ミリタリー趣味を通じて原作者とも親交のある藤原恒介である。原作では蓮華のパーカーのデザインも担当している。

 

 

◼ハンマーレイジ


 本書で登場するオリジナルヒロインの名は「六ツ木夏乃」。彼女は復讐のため万両組の関係者を次々と襲っていた。その手口はハンマーによる撲殺。被害者はみな原型をとどめないほどメチャクチャに潰されていた。またその戦闘スキルも高く、南天や蓮華とも渡り合うほどであった。しかし奇妙のことに彼女の背景は裏世界とは無縁で、その戦闘技術をどこで習得したのか、彼女の正体は何なのか、万両組は全くつかむことができない。弱体化した万両組に敵対組織が群がり、そこに藍・翠のコンビや伊万里も介入し、事態は混迷を深めていく。果たして復讐の鉄槌(ハンマー)は苺のもとまで届くのかー⁉

 本作の魅力を挙げるなら、まずはもちろんオリジナルキャラクターの六ツ木夏乃なのだが、それは読んで確かめてもらうとして、ここで挙げるとするならば万両組についてだろうか。原作では苺、南天、蓮華といった組織の中心人物の描写がメインだったが、本作では先代から万両に仕える腹心の部下や、893家業をカバーするための表向きの事業所など、万両組の周辺が描かれる。それによって横浜を仕切っているという設定により説得力が増したように思う。

 今回は万両チームが中心の物語だったが、藍と翠の殺し屋殺しや、伊万里や紅雪のように鳥の二つ名を持つ殺し屋との対決など続編にも期待したい。