汗牛未充棟

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野﨑まど的日常系――野﨑まど『パーフェクトフレンド 新装版』

 メディアワークス文庫から刊行された野﨑まど作品の新装版シリーズ第5弾は『パーフェクトフレンド』。ジャンルでいうなら日常系だろうか。
 
 よくある日常系のマンガなりアニメなりを頭に思い浮かべてほしい。複数人の主要キャラクターのなかには、主人公たちとなれ合うことを良しとせず、少し距離を置いているキャラクターが一人くらいはいると思う。最初はつれない素振りだが、次第に主人公たちと交流を深めていき、そのキャラの当番回で何らかのイベントがあってみんなと打ち解ける。
 
 本書『パートフェクトフレンド』はつまりその手のお話である。
 ……もちろん、それだけではないのだが。
 
パーフェクトフレンド 新装版 (メディアワークス文庫)

パーフェクトフレンド 新装版 (メディアワークス文庫)

 

 

〈あらすじ〉
 同級生よりも少しだけ賢く、クラス委員も毎年務める小学4年生の少女・理桜は、新年度早々に担任からお遣いを頼まれる。それは不登校の児童の家まで行って、様子を見て来てほしいというものだった。理桜は友だちのややや、柊子と三人でその子に会いに行くが、不登校児・さなかは大学までの学習を終え、いまは数学の研究者をしているという。
 大人とも対等に渡り合えると思っていた理桜は、自分よりはるかに頭がいいと認めざるをえないさなかを前にして、苦し紛れに指摘する。「友達居ないでしょ‼」
 こうして「友達とは何か」「友達の作り方」を探求するさなかと、理桜たちの学校生活が始まった。
 
 
 メインとなるのは理桜とさなかの関係性だが、そこに明るく能天気なややや(入力ミスではなく”ややや”という名前である)と、大人しくて読書好きな柊子も加わって、恒例の漫才のような掛け合いが繰り広げられる。そこに学校の怪談(井の頭の秘密、通称INO)という「日常の謎」要素も加わって、とても読みやすい。
 
 しかしそうやって油断していると、不意に刺してくるのがこのシリーズである。
 
 ”友達の作り方が、やっと解りました”
 
 果たしてこの物語はどう転ぶのか。
 
 ところでこの本、「百合SF」と言って言えなくもないのでは……?ちょっと無理筋かな?