汗牛未充棟

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シリーズ最終巻、有終の美を飾れるか⁉――西尾維新『美少年蜥蜴【影編】』

 この時期、本来なら「2019年ベスト」みたいな企画をやりたいのですが、なにせ今年刊行された本をあまり読んでいない気がするので、今年は諦める方向で。来年はやれるよう新刊にもどんどん手を出していきたいです。

 そんなわけで2019年ラストは西尾維新の美少年シリーズ、最終巻です。

 

美少年蜥蜴【影編】 (講談社タイガ)

美少年蜥蜴【影編】 (講談社タイガ)

 

 

〈あらすじ〉

 指輪学園中等部の美術室を根城にして、個性豊かな美少年たちが集う美少年探偵団。"良すぎる視力"を持ち、とある事件をきっかけに男装して入団することになった主人公・瞳島眉美と、団員たちの活躍(?)を描く美少年シリーズの第10弾後編。
 全国から才能ある学生を集めてつくられた「五重塔学園」。胎教委員会が支配するこの学園では、エリート同士を競わせて更なるエリートを生むはずが、なぜか全員が没個性の普通の生徒になってしまっていた。前回、眉美が再び見つけ出すことによって、五重塔学園の支配から逃れた美少年探偵団のメンバーは、この学園の校長にして胎教委員会の不名誉委員長・美作美作との交渉に乗り出すが、そこでとんでもない課題を与えられるのだった。

 

 講談社タイガの創刊から続いていた美少年シリーズですが、いよいよ本作で最終巻となりました。〈物語〉シリーズなどを踏まえるに、本当に終われるのかと思っていましたが、予想以上にしっかりと終わりを描いていて、良かったのではないでしょうか。

 私は昔からシリーズが長く続く物語が好きで、お気に入りの作品ほど永遠に続いてほしい、せめて続きがあるかのような終わり方をしてほしいと思っていました。しかし学園ものであれば、キャラクターの卒業やその後の将来が描かれることによって、明確に終わってしまいます。

 そういうとき、ちょっと物語から突き放されたような寂しさを感じたものですが、それも大切な読書体験だったように思います。美少年探偵団と同じ中学生の読者ならば、本作を読み終わってそんな気持ちを持っているかもしれません。

 しかし、シリーズの終わりについて考えるたび、「高校卒業」というこれ以上ないイベントを乗り越えて続いてる〈物語〉シリーズはヤベえなって思います。

 

 

 さて、以上がポジティブな意見ということで、作品についてネガティブな意見は見たくないという方は、ブラウザバック推奨です。

 

 

 そもそも新年からグチグチ言いたくないなと思って、予定を変更して今年最後の記事を美少年シリーズにしたのでした。

 

 

 では。前述のとおり、シリーズの締めにいたる流れは美しかったと思うのですが、ただ作品の最後の壁として、美作美作と彼の課題はふさわしかったのかなと思います。まあ、ラスボスという立場を意図的に避けるキャラクターではあったのですが、それにしても盛り上がりに欠けるというか……。1作目で美少年探偵団に見出された眉美が、今度は彼らを見出すという【光編】が良かっただけに、この【影編】にはなんだか蛇足感がありました。

 そもそも美少年シリーズとはどのような物語だったのでしょうか。初期はミステリ要素もあった気がするのですが、後半はそうでもなく(探偵団なのに)、派手なアクションがあるわけでもなければ、キャラクターものとしてもどうかなという感じが……。女性向けのキャラクター商売をするには、眉美にバランスが偏ってるかなという気がします。美少年の掘り下げもそんななかったし。

 このシリーズはなんだかずっと、打ち切り目前の漫画連載を追っているような感じでした。

 

 ところで、最近Twitterで作品への否定意見をブログ等で取り上げることの是非が話題になっていました。個人的には、なるべくポジティブなことだけ発信しようと考えています。しかしそれ以前に、私の選書が、ある程度評価の定まった作品に偏ってしまっていることがあると思います。

 2020年は新刊にどんどん手を出して、「つまらねえ」とか「意外といいじゃん」とか言えたらいいなと思います。

 

 そんなこんなで今年一年、ありがとうございました。