汗牛未充棟

読んだ本の感想などを中心に投稿します。Amazonリンクはアフィリエイトの設定がされています。ご承知おきください。

瞳島眉美が単身潜入調査に挑む――西尾維新『美少年M』

 指輪学園中等部の美術室を根城にして、個性豊かな美少年たちが集う美少年探偵団。異常に発達した視力を持ち、とある事件をきっかけに男装して入団することになった主人公・瞳島眉美と、団員たちの活躍(?)を描く美少年シリーズの第9弾。ちなみに主人公の眉美は西尾維新作品のメインキャラクターのうちでも屈指のクズとされている。

 タイトルは毎回江戸川乱歩作品のオマージュとなっており、今回の元ネタは『電人M』。

 

美少年М (講談社タイガ)

美少年М (講談社タイガ)

 

 

〈あらすじ〉
 視力の発達がピークを迎え近いうちに視力を失うと診断された眉美は、これを最後の活動と決めて、単身で私立アーチェリー女学園に潜入する。アーチェリー女学園には、敵対組織・胎教委員会に繋がっているはずの沃野禁止郎の痕跡が残っていた。
 さらにアーチェリー女学園では「M計画」という(コンプラ的な意味で)マジでヤバい計画が進行していた。女学園ゆえに仲間の助けを得られない眉美は、はたして計画を阻止することができるのか。

 

 

 表題の「美少年M」のほかに「審美試験」「札槻嘘の禁じられた遊び」という2つの短編が収録されている。しかし、正直なところ「美少年M」も引き延ばされているだけで、内容的には短編2編と同程度のものだったかなという印象です。

 

 最近、といってもここ数年ほどの西尾作品は、主人公の思考の過程を延々と描写していて、ストーリーの展開に乏しいような気がする。西尾維新といえば速筆で有名だが、ただ文字数さえあればいいってものではないぞと思ってしまう。
 それともこのスタイルも一定の需要があるのだろうか。掟上シリーズも思ったよりシリーズが進んでいたし、ドラマ化もしたし……。

 

 キャラクター同士の掛け合い変らず秀逸なので、美少年探偵団のメンバーが勢ぞろいする「審美試験」はおすすめです。

 

 ちなみに沃野禁止郎のアーチェリー女学園での変名である”目口じびか”は目と口に耳と鼻で”目口耳鼻科”ということだろうか。そのうち”耳鼻咽喉科”みたいな名前も出てきそう。