2019.5 読了本まとめ
今月から1ヶ月に読んだ本をまとめていこう、と思ったら5月は3冊しか読んでいなかった。3冊って…。
まあ、少年ジャンプのバックナンバーを公式アプリで買い漁って最新号に追い付いたり、『蒼穹のファフナー』シリーズを全部見て最新作を見に行ったりと、小説以外の媒体に時間を割いたのでさもありなん。
6月はもう少し小説の比重を上げたいところ。ハヤカワ文庫の百合フェアも始まるしね!
"学園ラブコメ"の主人公・高城圭は、この世界の構成力が弱まり、"なんでもあり"による侵略の危機に瀕していると伝えられる。さらに、干渉を始める"学園ファンタジー"や"SF"。果たして圭は"学園ラブコメ"を全うできるのか。
物語は通常、語られるキャラクターと、それを読む読者という2者によって成立する。しかし本書では読者とキャラクターの間に、ラブコメやSFといったジャンル概念や、虚構を作る力そのものといった新たな階層が登場する。むしろラブコメなどの概念こそが本書のキャラクターであり、表紙の描かれるキャラたちは作中作のキャラと言えるかもしれない。
フィクションという概念そのものをフィクションという枠に落とし込むことで、そもそもフィクションとか、物語とは何なのか、その構成要件を探る実験的コメディ。
冒頭で違和感を感じるかもしれないが、そのまま32ページまで読めば、ハイテンションで最後まで引きずられます。
"奇想SF全5編 三方行成の短編集第2弾"
カクヨムや同人誌への掲載作品に、書き下ろし1編を加えた全5編からなる、著者の短編集第2作。
表題作の『流れよわが涙、と孔明は言った』は、失態を犯した愛弟子の馬謖の首を斬ろうとするが、硬くて切れないというストーリー。タイトルも有名作のパロディであり、一見インパクト重視の出落ち作品かなと思うも、読み進めれば次々と奇想が展開し飽きさせない。荒唐無稽に思えて、馬謖の首が切れない理由にもSF的回答が与えられていて驚いた。
また、収録作の中でも特に評価が高いのはドラゴンカーセックスをテーマに書かれた「竜とダイヤモンド」だろう。獣人やドラゴンが実在する世界観で、新聞記者兼泥棒の鹿人と、貧乏貴族ながらなぜかドラゴンを飼育している"坊っちゃん"の物語。なぜドラゴンが車に欲情するのか、筋道立てて説明されている点も素晴らしいが、愛憎の果てに種族を越えた友情を描いたストーリー自体がとても面白かった。
"粘菌コンピュータが魅せる永い夢"
時は昭和2年。粘菌学者の南方熊楠は昭和孝幽学会という謎の団体に勧誘される。そこは、本流を外れた亜流の学者集団であった。自動人形"天皇機関"を作り上げ、天皇に献上することで自らの存在を知らしめようとする彼ら。南方は天皇機関の頭脳となる粘菌コンピューターを完成させるが、そこに革命家の陰謀が介入し事態は混沌を極めていく。
また、著者は本書の内容について「きらら4コマ」に例えている。確かに宿場に集まって騒がしくも天皇機関を作り上げようとする様は、謎の文化部が舞台の日常系と言っても過言ではないかもしれない。(ただし、性別、年齢、鯨飲、吐瀉物には目をつむることにする。)
昭和初期の怪しいやつらオールスターゲームに並行して展開される現実の認識に関するSF的考察。いろいろ盛りだくさんで大満足の一冊です。