特典小説が遂に書籍化。ストーリーを補完する必読の短編集!——川原礫『ソードアート・オンライン22 キス・アンド・フライ』
21巻「ユナイタル・リング Ⅰ 」の発売から約十ヶ月。待望の22巻はユナイタル・リングの続きではなく、短編集だった。書き下ろしではなく、アニメDVD&Blu-rayの特典として執筆された四編が再録されている。円盤まですべて集めるコアなファンには物足りないかもしれないが、どの短編も特典とは思えないほどの内容とボリュームで、一読者としてとてもありがたい。
ちなみにユナイタル・リングの続きは12月に発売ということで、そちらも楽しみにしながら、各短編の注目ポイントを押さえていきたい。
(ネタバレ要素を多少含みます。)
ソードアート・オンライン22 キス・アンド・フライ (電撃文庫)
- 作者: 川原礫,abec
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/10/10
- メディア: 文庫
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「ザ・デイ・ビフォア」
アインクラッド攻略中、結婚を決めたキリトとアスナが新居を購入する際のエピソード。新生アインクラッドにおいてもキリトたちパーティの拠点となり、ユナイタル・リングでは大変な目にあっているお馴染みのログハウスだが、今回不思議な現象に巻き込まれてしまう。
しかし旧アインクラッドで新婚の二人がこのログハウスで過ごしたのは二週間ほどだったと思うが、あとからあとからエピソードが追加され、やたら濃い二週間になっている気がする。1巻ではキリトの釣りエピソードがアスナが身バレに繋がったが、その後2巻でユイとの出会いが描かれ、著者本人による同人誌では流通できないようなアレコレもあった。
この時期にしかない二人の関係値が、それだけ書き甲斐があるのかもしれない。
「ザ・デイ・アフター」
新生アインクラッド開放後、バーサクヒーラーとして活躍するアスナに発生するアバターからの離脱現象。ハード(アミュスフィア)ではなくソフトの問題と突き止めたキリトたちだが、その原因は果たして……。
短編に一度登場しただけにも関わらず、キリトそして読者(視聴者)の心に深く刻まれたサチの存在。そんな彼女の存在をフォローしてくれる温かい一編だった。
「虹の橋」
ゲーム世界の危機とか全然関係なく、いつものメンバーでわちゃわちゃとクエストに挑む短編が大好きです。ありがとう。
過去にも同じような短編として「キャリバー」があったが(こちらにはシノンも出てくる。好き。)、そちらと同じく「アルヴヘイム・オンライン」の世界観の根底に関わると思われる謎がチラつく。北欧神話がベースになっていると思われるが、いつかALOワールドが一気に拡大するときが来るのかもしれない。そしてラグナロクも……。
「Sister's Prayer」
『ソードアート・オンライン7 マザーズ・ロザリオ』に登場したギルド《スリーピング・ナイツ》の物語。『マザーズ・ロザリオ』では名前だけの登場だったユウキの実姉ランも登場する。
「マザーズ・ロザリオ」はALOでユウキが編み出したオリジナルのソードスキル。その名前の由来について言及があったかどうかは記憶が定かでないが、今回のエピソードで母親との幸せな記憶や食前に祈りを捧げる様子がさりげなく挿入されている。
「裏表紙」
不憫かわいい。