勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録 (電撃の新文芸) 作者:ロケット商会 KADOKAWA Amazon 『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』は、とある大罪を犯して”懲罰勇者”となった主人公のザイロが、剣の《女神》テオリッタや仲間の懲罰勇者たちとともに、”魔王…
死なないセレンの昼と夜 ‐世界の終わり、旅する吸血鬼‐ (電撃文庫) 作者:早見 慎司 KADOKAWA Amazon 雨が降らなくなって数百年、とうに現代文明は崩壊し、見渡すばかりの荒野が広がる世界。そんな世界をサイドカー付きの三輪バイクで旅しながら、気まぐれに…
死物語 上 作者:西尾維新 講談社 Amazon かつて吸血鬼に出会い吸血鬼もどきになってしまった主人公・阿良々木暦と、同じく様々な怪異に出会ってしまったヒロインたちの関係を描く西尾維新の代表作〈物語〉シリーズ。通算27・28作目となる最新刊、『死物語(上…
老虎残夢 作者:桃野雑派 講談社 Amazon 「広い意味の推理小説」を募集する江戸川乱歩賞。今年度第67回は、伏尾美紀『北緯43度のコールドケース』(「センパーファイ―常に忠誠を―」改題)と、今回紹介する桃野雑派『老虎残夢』の二作が同時受賞した。公式の惹句…
感応グラン=ギニョル (創元日本SF叢書) 作者:空木 春宵 東京創元社 Amazon 怪奇・幻想小説やSFジャンルで活躍する新鋭、空木春宵の初の短編集『感応グラン=ギニョル』が、遂に創元SF叢書より刊行された。空木は2011年の第2回創元SF短編賞において、「繭の…
ウォーキングシミュレーターというゲームジャンルをご存知でしょうか。私はとあるラジオの特集でその存在を知ったのですが、その特徴を聞くうちに、SF作家・宮澤伊織のとある短編のことを思い出しました。 この記事では「ウォーキングシミュレーター」、そし…
第34回山本周五郎賞も受賞した圧巻のクライムノベル『テスカトリポカ』。麻薬資本主義(ドラッグ・キャピタリズム)をステップに血の資本主義(ブラッド・キャピタリズム)による新たなマーケットが築かれていく様を緻密に描くと同時に、物語には常にアステカ神…
年間を通して一人のイラストレーターが表紙を担当するコミック百合姫。これまでにもフライ、白身魚、ろるあなどの著名なイラストレーターが担当し、それぞれの世界観で読者を魅了してきたが、2021年は作家・伴名練とイラストレーター・けーしんのコンビが担…
どんな物語であれ、終わりはつきものです。小説に限らず、漫画やゲームが描く物語の虜となり、エンディングを迎えたあとも、愛したキャラクターたちの物語をもっと見たいと願った経験は、誰しもあるのではないでしょうか。 そうはいっても終わってしまった以…
3月末に公開された堀貴秀監督作品『JUNK HEAD』。先日地元の劇場でも公開されたので見てきました。 ほとんど独力で制作された長編のストップモーションアニメというだけでも驚きですが、強烈なビジュアルイメージを備えたSF作品でもあり、是非多くの人に見…
寺生まれのTさんは何をしにやってきたのか。それはもちろん「破ぁ!!」で怪異を退治するためであり、『裏世界ピクニック』最新6巻においては、裏世界に関わってしまった人の記憶を「破ぁ!!」で封印するためにやってきたに決まっています。 しかしメタ的な…
本物のデスゲームと化したVRMMO-RPG「ソードアート・オンライン」。100層からなるゲームの舞台「アインクラッド」の攻略を、1層から順番に描くSAO外伝プログレッシブシリーズは、最新7巻が先日発売されました。7層にたどり着いたキリトとアスナは、ベータテ…
挑発的な表情の少女のイラストが目を惹く花田一三六『蒸気と錬金 Stealchemy Fairytale』は、三文文士と毒舌妖精のコンビによる、スチームパンク・ロードノベルとなっています。 ロードノベルはそのまま旅行記でいいとして、ジャンル名としてよく聞く「スチ…
(※記事中に7巻までのネタバレを含みます。) 憑依した人間に抗えない殺人衝動をもたらす「殺戮因果連鎖憑依体」。そのような超常の存在に対し、「停時フィールド」という能力で戦う人々を描いたSF異能バトル小説『筺底のエルピス』の待望の7巻が発売されま…
昨年11月に出版された二つのSF作品。両者に関連はありませんが、どちらも現在の技術、もしくはその延長線上のごく近いところにある技術を扱ったSFサスペンスという点で、共通しています。さらに、物語の軸として、二人の男性の関係性の変化を描いている点で…
時雨沢恵一と黒星紅白という鉄板コンビの新作『レイの世界』は”ⅡⅤ”が手掛ける初の紙書籍として刊行されました。ですがそもそも、”ⅡⅤ”とはいったい何なのでしょうか。 レイの世界 ―Re:I― 1 Another World Tour 作者:時雨沢 恵一 発売日: 2021/01/25 メディア:…
突如として日本の領空に現れ、羽田空港に着陸した中国のステルス爆撃機。搭乗していた女性パイロットは日本への亡命を希望するが、その爆撃機にはとある”積荷”が載せられていた。 パイロットの身柄を巡る熾烈な格闘・逃亡劇と、事件の背後にある陰謀を暴くポ…
西尾維新は最終回というものに一家言ある作家だと、私は認識しています。過去の作品はほとんど実家に置いてきてしまったので確認できないのですが、どこかのあとがきで最終回というものに対する言及もあったような気がします。なにより、〈物語〉シリーズで…
TVアニメ「裏世界ピクニック」が好評放送中の宮澤伊織が2018年に書き下ろした『そいねドリーマー』がこの度文庫化となりました。実話怪談の怪異がはびこり、危険なグリッチに溢れた恐ろしい裏世界とは異なり、想像力次第でなんでもできるもう一つの”裏世界”…
先日の短編小説年間ベストに続きまして、長編小説の個人的年間ベスト5を発表したいと思います。 短編小説と同様に、買ってはいるけれど読めていない本も多くあり、反省です。特にシオドラ・ゴスの『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』など…
いろんな人がTwitterやブログで年間ベストを発表しているのを見て、「これ、やりたい!」と思った昨年末。やるからには新刊を沢山読まなければということで、2020年初頭は順調に読んでいたのですが、その後読書ペースがガタ落ちに。結局気になってはいるけど…
本書『文学少女対数学少女』は、2014年から2019年までに中国の雑誌などで発表された短編3本に、書き下ろし1本を加えて、中国は新星出版社から2019年4月に出版された連作短編集です。著者の長編第2作『雪が白いとき、かつそのときに限り』が翻訳されたときか…
2020年も残り2週間ほどとなり、年間ベストが次々と発表される時期になりました。年明けには「SFが読みたい!」の2021年版も刊行され、今年のベストSF作品が発表されるでしょう。 しかし今回は一足も二足も早く、来年(2021年)の年間ベストに選ばれるに違いな…
人類最強の請負人・哀川潤が今回請け負った仕事は、天才心理学者・軸本みよりの調査活動への同行。哀川潤は依頼人である軸本みより、そしてパトロン兼お世話係として鴉の濡れ羽島から招聘したメイド長・班田玲とともに、ヴェネチアの地に降り立ちます。しか…
シノはきれいの中を猛スピードで駆け抜けるだけの生き方をしたかった。その先に何があるのかは知らない。(p.264) これは主人公・シノのモノローグです。倫理的に危うい配信活動を繰り返し、急速に配信者としてのステップを駆け上がっていくシノ。その刹那…
2020年10月に刊行されたカミツキレイニーの新作『魔女と猟犬』は、まずその派手な表紙に目が止まります。赤一色の背景にバストアップで描かれた女性は、長い銀髪に、白い✖印が走った真っ赤な瞳、さらには開いた口からマゼンタの舌がとびでていて、一度見たら…
西尾維新の最新作は、2019年7月刊行の『ヴェールドマン仮説』から約1年ぶりのノンシリーズ作品、『デリバリールーム』。 帯の煽り文句には「わたしは戦う!幸せで、安全な出産のために!!」「儘宮宮子、中学3年生。妊娠6ヶ月。」といったインパクトのある言…
人間の剣豪、鳥竜(ワイバーン)の冒険家、森人(エルフ)の術士など、様々な種族・職種の「修羅」たちが「本物の勇者」の座をめぐって激突する『異修羅』。3巻の「絶息無声禍」を読みました。 異修羅III 絶息無声禍 (電撃の新文芸) 作者:珪素 発売日: 2020/08/…
オキシタケヒコ『筺底のエルピス』、第2章「夏の終わり」第3章「廃棄未来」について、読後の余韻が残っているうちに、いくつか感想を書いておこうと思います。 ネタバレには特に配慮しませんので、ご注意ください。 [まとめ買い] 筺底のエルピス 作者:オキ…
絶対好きなタイプの作品なのに、なかなか読むきっかけがなくて後回しにしている。読書好きならば、そんなシリーズ作品が一つや二つ思い当たるという方も多いのではないでしょうか。私の場合、小川一水『天冥の標』や、瘤久保慎司『錆喰いビスコ』がそれにあ…