汗牛未充棟

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反撃開始、遂にバロットが動き出す――冲方丁『マルドゥック・アノニマス 4』

 

 

 「共感」の力を用い、裏社会で着々と勢力を拡げるハンター率いる「クインテット」。彼らに対抗するため、ウフコックは善の勢力を作り上げる。これら両勢力の全面衝突が描かれたのが前回の3巻。激闘の果てにウフコックはハンターに捕らえられ、ガス室に囚われる。そこに満を持して登場するバロットという大興奮の引きで終わった3巻だったが、4巻ではそのガス室のある敵施設での攻防と、バロットがそこに至るまでの経緯が交互に語られている。


 敵施設「蜘蛛の巣」での状況が進行する度にバロットの成長ぶりに驚かされるが、過去パートにおいてバロットがどのような経験を経て力をつけていったのかが丁寧に描かれる。白眉はハンターと直接対話を行った情報戦だろう。武器の一切登場しない言葉による戦いはかなりの緊張感を持って描写され、今後待ち受けると予告されている法廷での対決への期待を存分に煽られた。

 また、書籍化にあたって加筆されたラストのパートも素晴らしかった。加筆されたということは、初期のプロットにはない場面だったのだろうが、バロットが新たな人生を送るためになくてはならない場面だったと感じた。

 イースターズオフィスが味方につけた新たな勢力にもまだまだ分からない部分が多く、また第3勢力も姿を見せ始めた。まだまだ終わりそうにないマルドゥックシリーズ、続刊を心待ちにしたい。