汗牛未充棟

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シリーズの過去と未来を照らし出す傑作ーー森博嗣『χの悲劇』『ψの悲劇』

 森博嗣による「Gシリーズ」はこれまで愛知県のC大学に通う加部谷、山吹、海月、雨宮ら学生たち、そして院生から晴れて准教授となった西之園を中心に物語が展開してきた。しかし『χの悲劇』から始まるGシリーズ後期三部作はその様相を異にする。登場人物表から加部谷や西之園の名前が消え、代わりに島田文子の名前が現れる。島田文子といえば森博嗣のデビュー作『すべてがFになる』で初登場し、その後も何度か登場する真賀田四季関連のキーパーソンである。

 これ以上何を言ってもネタバレになってしまいそうで多くは語れないが、この三部作はかつての『四季』シリーズのように、複数の森作品を結びつけるとても重要な物語になるのではないかと予感させる。三部作ラストにして、Gシリーズ最終巻の『ωの悲劇』を心待ちにしたい。

 

 

χの悲劇 (講談社ノベルス)

χの悲劇 (講談社ノベルス)

 

 
 香港の玩具メーカーに勤める島田文子は、二人の新入社員を引率していた。香港名物のトラムで移動しているとき、一人の男が不審な死を遂げる。警察は殺人だと主張するが、どのようにして移動中の車内で誰にも気づかれずに犯行に及んだのか。さらに日本の公安も事件に介入し、事態は急展開を見せる。
 過去と未来に光を当てる傑作。

 

 

 
 半ば引退し、自宅の研究室で隠居していた化学工学博士の八田洋久。彼は突如失踪してしまう。
 失踪から1年が経ち、彼の屋敷に八田の友人知人が集まった折、島田文子を名乗る若い女性が現れ、八田のコンピュータからとあるデータを発見する。それは「ψの悲劇」と名付けられた小説だった。そして発生する殺人事件。
 果たして「ψの悲劇」とは何を意味するのか。