偽りの聖杯戦争三日目、「ゆめのなか」からの脱出劇!――成田良悟『Fate/strange Fake⑥』
米国はスノーフィールドにて召喚されたセイバーを除く6騎の英霊たち。そして彼らを呼び水にして、さらに召喚された7騎の英霊たち。合計13騎の英霊が相争う「偽りの聖杯戦争」、その三日目の朝が静かに明けようとしていた。
〈あらすじ〉
大激闘から一夜、舞台となった病院前は激しい戦闘の跡を残して、すっかり人気がなくなっていた。
病院前で戦っていた彼らが取り込まれたのは、昏睡中の少女・来丘椿の夢の中。椿が召喚した偽ライダーの宝具によって作り上げられたこの異界から脱出するためには、マスターである少女を殺すしかないのだと、偽アサシンのマスターにして死徒であるジェスターは嘲笑う。自然と三つのグループに分けられた彼らのうち、偽アサシンとシグマは椿と接触し、偽バーサーカー陣営と教会からの監督役であるハンザ一行は外との交信を試みる。そしてセイバー陣営と『二十八人の怪物』の前には真キャスターが現れ、セイバーに揺さぶりをかけるのであった。
※以下、ネタバレを含みます。※
・新キャラクター、まだまだ登場
13騎のサーヴァントとそのマスターに加え、監督役にして代行者であるハンザや、アインツベルンの器に取りついたイシュタルなど、すでにしてキャラクタ―が大渋滞してるのに、ここに来てまた新たなキャラクターが喚ばれてしまったようです。
自らを「鮫(コウ)」と名乗り、本来始皇帝を召喚するための触媒であった弩弓をシグマに預けます。Wikipediaで始皇帝のページを見てみると、始皇帝自らが弩弓を使って「大鮫魚」を倒したというエピソードが載っていたので、その関係でしょうか。中性的だというその外観は、もしかしたら始皇帝の見た目を真似したのかもしれません。
キャラクターが増えた分、退場するキャラクターもいれば、ある意味スッキリするのですが、そこは成田良悟作品。ギルガメッシュなど敗退したキャラクターも完全に物語から退場したわけではありません。勝負に完全な決着がつかなかったり、多くの謎が謎のまま引っ張られ続けていて、若干消化不良に思うところもありますが、それだけ終盤の回収がすごいことになるということでしょう。期待して続きを待ちたいです。
・リチャード vs. プレラーティ
まさかのプレラーティによる第四次聖杯戦争の「再演」でした。関連作品の多いFateシリーズならではの面白さですね。聖杯問答のやり取りは「あれ?そんな6章みたいなこと言ってたっけ?」と思っていたらFakeの世界戦オリジナルの会話ということらしく、そのあたりのユルさも魅力の一つでしょうか。(そして三田先生の胃が痛む。)
四次のセイバーの姿を見てリチャードが絶望したり失望したりするというよりは、リチャードの治世とセイバーの理想の食い違いに衝撃を受けるのではないかと不安に思いながら読んでいましたが、そんな不安が馬鹿らしく思えるほどの主人公っぷりでした。
覚悟を決めたアヤカとリチャード、それと今回ようやく戦う理由を得たシグマの活躍も楽しみです。
それと、フラットの件。いつの間にか私は「事件簿からのゲストキャラだから、そうひどい目には合わないだろう」みたいな勘違いをしてしまっていたようです。出典こっちだった……。7巻でいろいろ説明してほしいけど、どうなるかなあ……。