汗牛未充棟

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ε λ η ――森博嗣「Gシリーズ」part 2

 

 森博嗣のGシリーズ。4~6作目は、『εに誓って』『λに歯がない』『ηなのに夢のよう』。この辺りから新キャラクターや他シリーズのキャラクターも登場し、盛り上がりを増していく。3作目『τになるまで待って』までで、Gシリーズのレギュラーキャラクター(加部谷、山吹、海月、赤柳)の紹介が終わり、ここから本番、といった感じだろうか。

 

 また、今回の3冊、特に『λに歯がない』から『ηなのに夢のよう』の流れは西之園萌絵のためにあると言っても、過言ではないだろう。『λに歯がない』で萌絵はついに両親の死という事実を受け入れ、消化することができたように思う。『ηなのに夢のよう』ではそんな萌絵に、両親の飛行機事故の裏側が開示される。それすらも萌絵は受け入れ、そして一つの選択をし、新たな人生を歩んでいく。文庫版の帯にあるようにこれを持って一つの区切り、「Gシリーズのターニングポイント」といえるのではないか。(森博嗣自身は”カバーに「ターニングポイント」と書かれていました。編集者が読んで、そう感じたのでしょうか。*1”と述べているが、至極真っ当なキャッチコピーだと思います…。)

 

 この作品のすごいところは、キャラクターが続々と追加され物語が加速し、萌絵が過去と向き合い決着をつけるというこの流れが、行き当たりばったりではなく、予め計画され、その通り遂行されているに違いないという点だ。だからこそ前巻の些細な出来事が次巻への伏線となり、唐突さのない展開が繰り広げられるのだろう。

 

 

 

εに誓って SWEARING ON SOLEMN ε (講談社文庫)

εに誓って SWEARING ON SOLEMN ε (講談社文庫)

 

 

 東京発、那古野行きの深夜バスがジャックされた。車内には偶然乗り合わせてしまった加部谷と山吹、そして「εに誓って」という奇妙な名前の団体客が…。西之園が見守るしかないなか、果たしてバスは無事那古野にたどり着くのか。そして真賀田四季に対抗する公安の沓掛が犀川接触する。

 

 

λに歯がない λ HAS NO TEETH (講談社文庫)

λに歯がない λ HAS NO TEETH (講談社文庫)

 

 

 とある研究所で4人の銃殺したいが発見された。しかし研究所のドアの開閉システムに異常はなく、実質的な密室状態となっていた。さらに被害者の身元も分からず、ポケットには「λに歯がない」書かれたカードが入っていた。
 一方で西之園萌絵は過去と向き合い、保呂草がつい日本国内で動き出す。

 

 

ηなのに夢のよう DREAMILY IN SPITE OF η (講談社文庫)

ηなのに夢のよう DREAMILY IN SPITE OF η (講談社文庫)

 

 

 12mの高さの木の枝で首つり死体が発見され、その近くで「ηなのに夢のよう」と書かれた絵馬が発見された。首つり死体は自殺か他殺か。どのようにして12mの高さまで到達したのか。その後も不審な首つり死体は発見されるが、ここに来て遂に事件とその謎は脇へと追いやられる。
 沓掛と瀬在丸紅子と久慈昌山が会合し、赤柳と保呂草が対面する。そしてなにより萌絵が真実と対峙する。Gシリーズの世界が、また新たな広がりを見せる。