公開間近!冲方作品実写化第2弾!ーー冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』
- 作者: 冲方丁
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2018/10/06
- メディア: 文庫
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廃病院に集まった十二人の少年少女。彼らの目的は「安楽死」をすること。決を取り、全員一致で、それは実行されるはずだった。だが、病院のベッドには“十三人目”の少年の死体が。彼は何者で、なぜここにいるのか?「実行」を阻む問題に、十二人は議論を重ねていく。互いの思いの交錯する中で出された結論とは。
■イントロ
2019年1月25日に公開が迫った堤幸彦監督作品、『十二人の死にたい子どもたち』。本書はその原作小説である。
■マルチ作家、冲方丁
冲方丁ほど多ジャンルで才能を発揮する作家もなかなかいないだろう。デビュー作『黒い季節』は現代が舞台の異能バトルものであったが、『マルドゥック・スクランブル』『シュピーゲル』シリーズなどのSF作品、『麒麟児』『花とゆめ』などの時代小説、さらには異世界ファンタジーから官能小説まで(!)、ジャンルにとらわれず多彩な作品を発表している。
また小説の執筆だけでなく、アニメ脚本、漫画原作、ゲームのシナリオライターとしても活動している。アニメ脚本の例を挙げるとしたら、ロボットものの『蒼穹のファフナー』やSFサスペンス『PSYCHO-PASS』などだろうか。
こうして冲方作品を列挙してみると、現代が舞台でしかも異能や武器銃器が登場しない作品というのはとても珍しいと感じる。
■会話劇ミステリ
閑話休題。本作の内容に目を戻すと、ジャンルはミステリーとされているように思う。確かに正体不明の「十三人目」の死体の謎は、この作品の軸となる大事な要素だが、本書の主題は決して謎解きではないように思う。実際作中でも十三人目が発見された当初は、不自然な状況にも関わらず、集団自殺を決行しようとしたほどだ。(2番君の活躍で謎を放置したまま自殺、完!の展開は回避された。実際に彼が同級生だったら「ウザい」と感じてしまうだろうが、この点はナイスプレーである。)
解説で吉田伸子氏はこの作品を『十二人の怒れる男』や『12人の優しい日本人』に連なる「十二人もの」の作品だと述べている。廃病院に集った子どもたちは裁判を開くわけではないが、集団自殺の実行には参加者全員の賛成が必要になるため、十三人目の謎を放置したまま自殺を決行するか、謎を解き明かしてから自殺するかで議論が始まる。この議論というのが作品の本筋であり、それによる子どもたちの心情の変遷が最大の見所ではないだろうか。